この記事でわかること
「母が一人で暮らしているけど、最近様子がおかしい」
「施設に入れたほうがいいとは思うけど、本人が嫌がっている」
「遠方に住んでいるから、何かあってもすぐに駆けつけられない」
——そんな不安を抱えながら、それでも具体的に動けずにいる方は、決して少なくありません。
この記事では、80代の高齢女性が一人暮らしを続けながら、認知機能の低下や転倒リスク、施設入所をめぐる家族との意見の食い違いという複合的な課題に直面した実際の事例をもとに、ケアマネジャーがどのように関わり、どのような支援を組み立てたかをご紹介します。
「うちの親と似ているかも」と感じたら、ぜひ最後までお読みください。きっと、次の一歩が見えてくるはずです。
事例紹介|吉川初江さん(80代・東京都世田谷区近郊在住)のケース
基本情報(すべて架空)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 氏名 | 吉川 初江(よしかわ はつえ) |
| 年齢 | 86歳 |
| 性別 | 女性 |
| 居住形態 | 一人暮らし(賃貸マンション) |
| 認知症自立度 | IIa |
| 要介護度 | 要介護2 |
| 家族構成 | 長男(長野県在住)・次男(京都府在住)の2名 |
| 担当ケアマネジャー | 桐島 典子(居宅介護支援事業所「下高井戸支援」所属) |
初江さんはマンションの706号室で一人暮らしをしており、訪問介護・デイサービス・訪問診療・福祉用具貸与などの介護保険サービスをフル活用しながら生活を続けていました。長男は長野県飯田市、次男は京都府宇治市と、どちらも遠方に住んでおり、緊急時に駆けつけることが難しい状況でした。
どんな悩みを抱えていたか
■ 認知機能の低下が日常生活に影響し始めた
初江さんに異変が現れ始めたのは、ケアマネジャーの桐島さんが関わるようになってから約1年が経過した頃のことです。
トイレのドアに鍵をかけたことを忘れる、水道の蛇口の操作を間違える、薬の飲み忘れが増える——。本人自身も「最近、物忘れがひどくなった」と自覚しており、日記や手紙を書く際に文字を間違えることが増えたと訴えていました。
そしてある朝、次男の隆博さん(仮名)に突然電話がかかってきました。「中国からの詐欺電話があった。警察を呼んでほしい」という内容でしたが、実際には着信履歴がなく、夢と現実を区別できなくなっていることが明らかになりました。警察が確認に訪れ、近隣住民にも迷惑をかける事態となりました。
■ 「施設に入りたくない」という本人の強い意向
家族としては、これだけ認知機能が低下しているなら施設への移住を検討すべきだと感じていました。しかし、初江さんの意向は一貫して「家にいたい」というもの。
施設入所の話を持ち出すたびに「嫌だ」と言い、次の訪問では「どこでもいい」と言い、またその次には「やっぱり東京が好き」と言う——本人の意向は日々揺れ動き、家族はどう話を進めればよいかわからなくなっていきました。
■ 遠方に住む家族の「いざというときに動けない」という不安
長男の浩一さん(仮名)は年に数回訪問できる程度で、緊急搬送があっても駆けつけるまでに数時間かかります。次男の隆博さんも同様の状況で、「何かあったときに自分たちが対応できない」という焦りが日増しに強くなっていきました。
長男は「自分が同居して面倒を見たい」という思いを持ち始め、次男は「同居は難しい。施設入所のほうが現実的では」と意見が割れる状況も生まれていました。
■ 施設選び・費用・手続きの複雑さ
「施設に入れたほうがいい」とわかっていても、どんな施設を選べばいいのか、費用はどのくらいかかるのか、転居後の介護保険の扱いはどうなるのか——情報が多すぎて、何から手をつければよいかわからない状態でした。
ケアマネジャーと一緒に解決した方法
■ ステップ1:現状の整理と本人の「本音」を引き出す
桐島ケアマネは毎月定期的に初江さん宅を訪問し、身体状況・認知機能・生活環境・本人の意向を丁寧に確認し続けました。
「施設に入りたくない」という言葉の裏には、「慣れ親しんだ環境から離れることへの不安」「マンション内の顔なじみとの別れへの寂しさ」「息子たちに迷惑をかけているという罪悪感」が混在していることが見えてきました。
桐島ケアマネは家族に対して、「本人が100%納得して施設入所するケースは稀です。大切なのは、選択肢を提示しながら対話を続けることです」と伝え、無理に説得しようとするのではなく、焦らず向き合うことを勧めました。
■ ステップ2:施設紹介センターとの連携
施設探しを個人で行うことの難しさを理解したうえで、桐島ケアマネは施設紹介専門のアドバイザー(仮名:和田氏)を窓口として紹介しました。
和田氏は家族の状況(兄弟2人が遠方在住・費用の上限・本人の身体状況)を踏まえたうえで、候補となる施設を絞り込み、メールやオンラインでの情報共有を行いました。施設見学の際に「フロアスタッフの雰囲気を必ず確認してください」というアドバイスも、桐島ケアマネを通じて家族に伝わりました。
■ ステップ3:在宅サービスの強化と安全網の整備
施設入所の準備を進めながら、同時に「今の生活をより安全にすること」も並行して取り組みました。
- 土日を含む訪問介護の強化(朝夕2回訪問)
- 訪問看護の新規導入(バイタル確認・服薬管理・緊急連絡体制の整備)
- インターホン音量拡大器の設置(次男が訪問時に対応)
- 服薬ロボットの活用と飲み忘れ対策
特に訪問看護の導入は、「医師の診療補助として元気なうちから様子を見てもらう」という形で本人に説明し、人の出入りを好まない初江さんにも了承を得られました。
■ ステップ4:家族間の情報共有と「決め方」のアドバイス
長男・次男・ケアマネ・施設紹介アドバイザーとの情報共有を定期的に行い、「施設が決まったら、あとから丁寧に本人に説明する」という方針を共有しました。
桐島ケアマネからのアドバイスは明確でした。「今の初江さんには、まだ新しい環境に慣れる力が残っています。認知機能がさらに低下してからでは、適応がより難しくなります。早めに動くことが、本人にとっても家族にとっても優しい選択です」と。
このアドバイスが、揺れ続けていた家族の背中を押しました。
この事例から学べる3つのポイント
ポイント1:「本人が嫌がっている」は、施設入所を止める理由にならない
多くの家族が「本人が嫌だと言っているから」と施設入所をためらいます。しかし、認知機能が低下している状態では、本人の意向は日々変化します。重要なのは「今この瞬間の言葉」だけでなく、本人の安全と尊厳を長期的に守ることです。ケアマネジャーはその判断を一緒に考えてくれる専門家です。
ポイント2:遠方在住の家族こそ、ケアマネジャーとの連絡を密にすること
緊急時に駆けつけられないからこそ、ケアマネジャーが「地域の目」として機能します。定期的な電話連絡・報告を通じて、現状の変化をリアルタイムで把握することが大切です。「何かあってから動く」のではなく、「何もないときから相談しておく」関係性を作っておきましょう。
ポイント3:施設探しは「専門家」に任せるのが近道
施設の種類・費用・空き状況・入所基準は複雑で、個人で調べるには限界があります。施設紹介センターや居宅介護支援事業所のケアマネジャーを通じて情報収集することで、家族の条件に合った施設を効率よく見つけることができます。費用は紹介センターの利用料が無料であることも多く、積極的に活用すべきです。
あなたの家族も同じ悩みを抱えていませんか?
この記事を読んで、「うちの親と状況が似ている」と感じた方はいらっしゃいませんか?
- 一人暮らしの親が、最近なんとなくおかしい
- 施設のことを考えているけど、何から始めればいいかわからない
- 遠方に住んでいて、現状をしっかり把握できていない
- 兄弟間で意見が合わず、家族会議が進まない
こうした悩みは、決して特別なことではありません。多くの家族が、同じような「もやもや」を抱えながら日々を過ごしています。大切なのは、「一人で抱え込まない」ことです。
居宅介護支援事業所のケアマネジャーは、介護保険サービスの調整だけでなく、施設探しのアドバイス、家族間の調整サポート、本人への働きかけ方のアドバイスまで、幅広く相談に乗ることができます。「まだそこまで深刻ではないかも」という段階でも、相談することで「早めに動いてよかった」と感じる方がほとんどです。
まとめ|まず相談することが第一歩
今回ご紹介した吉川初江さんのケースから見えてくるのは、「早めの相談」と「専門家との連携」が在宅介護の質を大きく左右するということです。
- ✅ 認知機能の低下は、早期発見・早期対応が本人の安心につながる
- ✅ 施設入所は「最後の手段」ではなく、生活の質を高める選択肢のひとつ
- ✅ ケアマネジャーは、介護の「伴走者」として家族全体をサポートしてくれる
「何かあってから動く」のではなく、「何かある前に相談する」——それが、大切な家族を守るための最善の行動です。
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やさしい手 居宅介護支援事業所では、親の介護や施設入所に関するご相談を随時受け付けています。担当ケアマネジャーが、あなたのご家族の状況に合わせて丁寧にアドバイスいたします。まずはお気軽にお問い合わせください。
無料相談・お問い合わせはこちら※この記事は、実際の支援事例をもとに個人情報を完全に匿名化・再構成したものです。特定の個人・施設・医療機関を示すものではありません。





