この記事でわかること

「最近、母が何度も転んでいる」「認知症が進んでいるみたいで、目が離せない」「どのサービスを使えばいいのかわからない」

そんな不安を抱えながら、日々親の介護と向き合っている方は少なくありません。

この記事では、都内在住の高齢女性・北村君子さん(仮名・99歳)の在宅介護事例をもとに、ケアマネジャーがどのように家族の悩みを受け止め、介護サービスを調整しながら生活の質を守っていったかをご紹介します。「自分の家族と似ているかも」「何から始めればいいかわからない」という方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。

事例紹介|北村君子さん(仮名)のケース

項目内容
年齢99歳
性別女性
居住地東京都内
家族構成息子夫婦と同居(一部日中独居)
介護認定要介護1(更新前は要介護3)
主な利用サービスデイサービス・訪問介護・訪問看護・福祉用具レンタル

北村さんは長年、地域でひとり暮らしに近い形で生活してきた女性です。趣味の俳句を愛し、デイサービスにも積極的に参加。年齢を感じさせないほど活動的な一面もありながら、転倒リスクの増大や認知機能の低下が少しずつ進んでいました。

担当ケアマネジャーの森川典子さん(仮名)が継続的に関わり、本人と家族の変化を丁寧に追い続けてきた事例です。

どんな悩みを抱えていたか

転倒が繰り返される不安

ある夏の夕方、森川さんが訪問を終えて玄関を出た直後のことでした。振り返ると、北村さんが屋外の郵便ポスト付近に座り込んでいました。転倒していたのです。

幸い骨折はなかったものの、抗凝固剤を服用していたため、家族はひやりとしました。頭にたんこぶができていたためCT検査を受け、内出血がないことを確認してようやく安心できたといいます。

その後の家族との電話では、こんな声が聞かれました。

「一人で外に出ないよう言っても、新聞を取りに行くと言って出てしまうんです。どうすれば止められますか?」

このやりとりが象徴するように、「転倒をどう防ぐか」は家族にとって日常的な緊張の源でした。

認知症の進行と日中独居の不安

数ヶ月後、別の深刻な出来事が起きました。秋のある日、北村さんが一人で外出し、踏切付近まで歩いていってしまったのです。

短期記憶の障害が進行し、数分前のことも忘れてしまう状態に。夜間は見守りカメラで息子夫婦が確認できるようになりましたが、日中に独居になる時間帯の安全確保が大きな課題として浮かび上がりました。

サービスの内容が身体状況に合っていない

要介護認定が「要介護3」から「要介護1」へと変更されたことで、使えるサービスの限度額が下がりました。それに伴い、サービス内容の見直しが必要に。しかし、家族からすれば「認定が下がったからといって介護の手間が減ったわけではない」というのが本音でした。

ケアマネジャーと一緒に解決した方法

まずは「見える化」から始めた

森川さんは毎月の訪問を欠かさず、体重・歩行状態・食欲・認知機能の変化を継続的に記録していました。転倒後には家族に電話で状況確認を行い、事実を丁寧に整理。「なぜ転倒したのか」「今後どう予防するか」を、家族と一緒に考えていきました。

杖を使わずサンダルで外出していたことが転倒の一因と判断し、屋外用手すりの設置を検討することを提案しました。

サービス担当者会議で関係者が一堂に

要介護認定の更新に伴い、サービス担当者会議が開催されました。出席者は本人・息子夫婦・訪問看護師・訪問介護のサービス責任者・住環境の相談員。医師やデイサービスの相談員には事前に照会を行い、情報を集約しました。

この会議で決まったこと:

  • デイサービス・訪問看護(リハビリ)の継続
  • 入浴介助を訪問介護へ変更
  • 訪問看護(看護師)は月1回に調整
  • 訪問介護による掃除は中止
  • 福祉用具(手すり・歩行器)の継続レンタル
  • 4月から新スケジュールでスタート

家族の希望と本人の状態、そして限度額のバランスを考えながら、チーム全体で最善策を話し合う場が設けられたことで、家族は「一人で悩まなくていい」と感じられたといいます。

「変化に気づく目」が生活を支えた

その後の訪問でも、森川さんは細かな変化を見逃しませんでした。

  • 印鑑の保管場所を忘れる・置き直しを誤るという認知機能の変化を早期に記録
  • 歩行器の使い方が前傾姿勢になってきた点を確認し、家族に共有
  • 体重が37kgから40kgへ回復したことを医師とともに確認し、プランの継続を判断

「小さな変化を積み重ねて記録すること」が、適切なタイミングでのサービス変更を可能にしていました。

この事例から学べる3つのポイント

① 転倒は「事故」ではなく「予防できるリスク」

北村さんのケースでは、転倒が繰り返されるたびに原因を分析し、環境整備(手すりの追加など)や歩行補助具の見直しが行われました。転倒は年齢のせいとあきらめるのではなく、ケアマネジャーと一緒に「なぜ転んだか」を考えることが重要です。

② 認知症の進行はサービスで「カバー」できる

認知機能が低下しても、適切なサービスの組み合わせで本人の尊厳と安全を両立することは可能です。見守りカメラ・デイサービスの活用・訪問介護のスケジュール調整など、多角的なアプローチが功を奏しました。

③ 「要介護度が下がった」=「介護が楽になった」ではない

認定区分が下がっても、家族の介護負担が減るわけではありません。そのギャップを埋めるためにも、ケアマネジャーへの相談と担当者会議の活用が重要です。限られた限度額の中で最大限の支援を組み立てることが、専門家の仕事です。

あなたの家族も同じ悩みを抱えていませんか?

「うちの親も最近転びやすくなった」
「認知症かもしれないけど、どこに相談すればいいかわからない」
「サービスを使い始めたけど、本当にこれで合っているのか不安」

そう感じているのは、あなただけではありません。

北村さんの家族も、最初は「どこに相談すればいいかもわからない」という状態でした。しかし、ケアマネジャーという専門家が間に入り、定期的に状況を確認し、チームで支えていく体制ができてから、「一人で抱え込まなくていい」という安心感が生まれていきました。

介護は、正解がひとつではありません。でも、専門家と一緒に考えることで、より良い選択肢が見えてくるのは確かです。

まとめ|まず相談することが第一歩

今回の事例で見えてきたのは、次のことです。

  • 転倒・認知症・サービス調整など、複合的な課題が重なっても、ケアマネジャーが中心となってチームで対応できる
  • 月1回の定期訪問や担当者会議を通じて、小さな変化を見逃さない継続的な支援が生活の質を守る
  • 家族の不安や希望をしっかり聞いてくれる相談相手がいることが、介護を続ける力になる

「まだそこまで深刻じゃないから」「相談するほどのことじゃないかな」と思っていても、早めに動くほど選択肢は広がります。

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※この記事は、実際の支援事例をもとに個人情報を完全に匿名化・再構成したものです。特定の個人・施設・医療機関を示すものではありません。